化学療法に伴う悪心・嘔吐のリスク因子は?

抗悪性腫瘍薬による悪心・嘔吐

がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting; CINV)は、治療関連因子と患者関連因子があります。今回は患者関連因子について紹介していきます。


 
くろ
使用する薬剤だけ見て、制吐剤を決定するだけでいいのか?
 
はく
ガイドライン通りに制吐療法をしても、人によっては、すごい悪心嘔吐が出やすい人がいるよね。
 
くろ
患者関連因子からリスクを考えてみるか、場合によっては支持療法を強める必要もありそうだな
 
はく
初回に、いろいろなリスク因子を評価することで、できる対策もありそですね!

主なリスク因子

日常的な飲酒歴がない方

日常的な飲酒歴ないの人は、飲酒歴のある方に比較して、ハザート比が1.54 (95%CI 1.34-1.72)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013

喫煙歴のない方

喫煙歴ないの人は、喫煙歴のある方に比較して、ハザート比が1.25 (95%CI 1.08-1.45)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013
 
くろ
喫煙者は、確かに悪心嘔吐のリスクが非喫煙者に比べて低いが、もちろん、がんの罹患率自体は大きく上昇するぞ。
 
はく
ですね~

若年の方

55歳未満は55歳以上の方と比較して、ハザート比が1.44 (95%CI 1.24-1.67)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013

60歳未満は60歳以上の方と比較して、オッズ比が1.41 (95%CI 1.12-1.77)

 Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
はく
55歳未満の患者さんの化学療法であれば、制吐療法には要注意ですね!

女性の方

女性は男性と比較して、ハザート比が1.66 (95%CI 1.44-1.92)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013

つわり歴がある方

つわり歴がある方は、ない方と比較して、オッズ比が1.30 (95%CI 1.04-1.64)

 Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
くろ
つわり歴だけではなく、乗り物酔いしやすい人も要注意だな。

7時間未満の睡眠の方

7時間未満の睡眠の方は、それ以上睡眠される方と比較して、オッズ比が1.34 (95%CI 1.10-1.48)

Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
くろ
俺は、睡眠時間が5時間だから、リスクが上昇する可能性がありか…。
 
はく
ですね~。みんな働きすぎです!

前サイクルに悪心嘔吐がある方

前サイクルに悪心嘔吐がある方はそうでない方と比較して、オッズ比が5.17 (95%CI 3.72-7.18)

Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
一度、悪心嘔吐を経験すると、悪循環になってしまうな。
 
初回が大事ですね!きちんとした制吐療法を確認しよう!

化学療法の種類

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薬剤については、治療関連因子によるものと考えられるので、上記の制吐薬適正使用ガイドラインにおける、高度、中等度、軽度、最小度リスク分類に合わせて、制吐療法を選択しましょう。

AC/ECとその他の化学療法を比較して、ハザート比が3.60 (95%CI 2.41-5.37)

シスプラチンとその他の化学療法を比較して、ハザート比が3.22 (95%CI 2.17-4.77)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013

プラチナ系かアントラサイクリン系を含む化学療法とそうでない化学療法を比較して、オッズ比が1.94 (95%CI 1.45-2.60)

Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
くろ
嘔吐→循環血漿量の低下→腎前性腎障害→シスプラチンによる腎障害の悪化などの悪循環になる可能があるな。
 
はく
きちんとした悪心嘔吐の予防・治療は腎障害の予防にもつながるんですね!

非処方薬の制吐薬を使用した方

非処方の制吐剤を使用した方は、そうでない方と比較して、オッズ比が2.70 (95%CI 1.45-2.60)

Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267
 
制吐療法の重要性をあらかじめ説明しておく必要がありそうだな。

予期性嘔吐歴のあるかた

予期性の嘔吐歴がある方は、ない方と比較して、オッズ比が1.41 (95%CI 1.13-1.77)

Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267

その他

PSでの比較

PS=2or1の方とPS=0の方を比較して、ハザート比が1.08 (95%CI 0.93-1.25)

Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013
 
パフォーマンスステータス(PS)は、リスク因子とはなりずらいんだね!

まとめ

図表で比較

因子比較ハザート比
性別女性 vs 男性1.66 (95%CI 1.44-1.92)
年齢55<vs≧551.44 (95%CI 1.24-1.67)
薬剤AC/ECvsOthers3.60 (95%CI 2.41-5.37)
薬剤Cisplatin vs Others3.22 (95%CI 2.17-4.77)
PSPS=2or1 vs PS=01.08 (95%CI 0.93-1.25)
喫煙歴No vs Yes1.25 (95%CI 1.08-1.45)
飲酒No vs Yes1.54 (95%CI 1.34-1.72)
Sekine I,et al.Cancer Sci.104;711-7:2013
因子比較オッズ
年齢60< vs 60≧1.41 (95%CI 1.12-1.77)
予期性嘔吐歴Yes vs No1.41 (95%CI 1.13-1.77)
睡眠7時間未満1.34 (95%CI 1.10-1.48)
つわり歴Yes vs No1.30 (95%CI 1.04-1.64)
非処方薬の制吐薬の使用Yes vs No2.70 (95%CI 1.45-2.60)
プラチナ系、アントラサイクリン系の使用Yes vs No1.94 (95%CI 1.45-2.60)
前サイクルに悪心嘔吐ありYes vs No5.17 (95%CI 3.72-7.18)
Dranitsaris G, Molassiotis A, Clemons M, et al.Ann Oncol. 2017; 28: 1260-1267

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