ドーピング・競技禁止薬の探し方

ドーピング・競技禁止薬の探し方

私は、現役薬剤師として働いていますが、たまに、スポーツをしている学生・社会人の方の治療に携わることがあります。

スポーツに人生をかけているケースも少なくはなく、何気なく治療が始まってしまった場合に、実は、重要な大会が控えていて、大会の禁止物質でしたでは、洒落になりません。

最近では、治療目的で内服していた薬がや、健康目的で内服していたサプリメントに、実は競技の禁止物質が入っていて、検査でドーピング違反となるケースがあります。

違反した場合は、競技成績が剥奪されたり、数年間は大会に参加できなくなるなどの制裁が与えられることもあります。

明らかな禁止物質以外にも、継続的に服用している薬の中にも禁止物質が使用されている場合があります

また、大会が開催されいる期間以外であれば、短期的に使用しようが認められている薬剤もあります。

しかし、初見でどの薬剤が禁止物質で、摂取したらどのくらいの期間をあけるべきかどうかを瞬時に判断するのは至難の業です。

そんなときに、頼れる存在なのが、[スポーツ ファーマシスト]です。

現在、2021/4/1時点で1万1489名の認定者数がいます。

今回の記事では、[スポーツ ファーマシスト]の検索方法、選び方や、便利ツールである[Global PRO]の紹介をしていきたいと思います。

 
くろ
アスリートの方で、薬を内服開始になったが、実はドーピングや競技禁止薬に該当していたなんてあってはならないな
 
はく
場合によっては、薬剤の変更によって回避できることもあるから、薬剤師に相談してみよう!

スポーツファーマシストに相談する

ドーピングや競技禁止薬については、専門家に相談することを強くおすすめします。

私が相談先におすすめしているのは、最新のドーピングに関する知識をもった[スポーツファーマシスト]です。

スポーツファーマシストは、国家試験に合格し薬剤師の免許を持ち、かつ、日本アンチ・ドーピング機構が定める[公認スポーツファーマシスト認定プログラム]終了後に認定される資格です。

活動としては、インターハイや国体などで、参加選手への情報提供だけでなく、学校にて、生徒たちに医薬品適正使用におけるレクチャーなどがあります。

本記事の後半では、典型的な競技である[ボディビル]において、ステロイドに分類される[プレドニゾロン]が使用できるかどうかを調べてみます。

まずは、相談方法から、確認していきましょう!

日本アンチ・ドーピング機構のHP

以下の、日本アンチ・ドーピング機構のHPから、近くの「スポーツファーマシスト」を簡単に検索できます。

https://www.playtruejapan.org/activity/pharmacist.html

日本アンチ・ドーピング機構>事業と活動>スポーツファーマシストのページへ行き、下の方に、[スポーツファーマシスト]を探すを押します。

都道府県、郵便番号、住所、勤務先、その他などで絞り込めます。

 
くろ
俺のおすすめは、薬を買う、処方箋を交付される場所を1つ絞った[かかりつけの薬局]に相談することだな。
 
はく
薬の情報が一元化されるから、他に新しい薬がでたときにも、注意してくれるよ!
 
くろ
あとは、英語対応できる場所もあるんだな。

検索してみると以下の項目が分かります

  • 氏名
  • 勤務先
  • 連絡先
  • 住所
  • 業種
  • その他の情報
  • 興味のあるスポーツ

個人的には「興味のあるスポーツ」が、結構、重要な情報だと思います。

競技によって、禁止されている薬剤は異なるので、よりその競技に詳しい方を選択するのがベターかなと思います。

また、世界大会などで、いろいろな国の選手がいますので、英語対応ができるかどうかを調べることができるのは便利な機能ですね!

 
くろ
俺も、[スポーツファーマシスト]に連絡を取ったことがあるんだよな。親切に教えてもらえたぞ。
 
はく
僕は競技している患者さんがいて、グレーな薬剤があったので、[スポーツファーマシスト]に相談してみたよ!

Global PROで検索する

Global PRO [Global Drug Reference Online]は薬の製品や成分を検索するためのサイトです。

アメリカ、カナダ、イギリス、スイス、日本、オーストラリア、ニュージーランドの7各国により運営されており、世界アンチ・ドーピング規程禁止表国際基に対応しています。

https://globaldro.com/JP/search

検索方法

  • ユーザータイプ
  • 競技の種類
  • 医薬品名
 
くろ
今回は、試しに、ボディビルダーの方がステロイドである、プレドニゾロンを開始するケースを想定しよう。

まずは、検索する人についての情報を入力します。

続いて、「競技」の欄から、ボディビルを選択します。

 
はく
いろいろな競技があります!

検索で、薬剤名を入力します。今回は先発品名であり、[プレドニン]を入力すると予測変換で出てきました。

一般名の[プレドニゾロン」では、先発の[プレドニン]は検索できませんでした。

[商品名]で検索するとよいと思います!後発品[ジェネリック]はそのまま、一般名でも検索にヒットします。

以下の検索内容を確認することができます。

  • 投与経路
  • 競技会での使用の可否
  • 競技会外での使用の可否
  • 注意点
  • WADAの分類
  • 検索詳細情報
 
くろ
プレドニンは、競技会では[禁止]になっているな。
 
はく
でも、競技会外では、[禁止されていない]よ!

結局、使用してもよいの?と疑問に思いますよね。Global PROのホームページのQ&Aを確認していきましょう!

Q 競技会(時)”及び‶競技会外”とはどういう意味ですか

A ”競技会(時)”とは、競技者が参加する予定の競技会の前日の午後 11 時 59 分に開始され、当該競技会及び競技会に関係する検体採取手続の終了までの期間を意味します。

但し、国際競技連盟が特定の競技のために異なる定義が必要であることを提示した場合には、 WADA は当該競技のために代わりの定義を承認することがあります。

‶競技会外”とは、”競技会(時)”以外の期間を示します。

FAQs (globaldro.com)

つまり、大会前に、短期的に使用しなければならいケースがあり、競技会の前日の午後 11 時 59 分に体に残存していなければ良いと考えられます。

プレドニンの添付文書を参照すると、プレドニゾロンの静脈内注射の情報しかないが、健康成人の半減期は、2.5±0.7hrとあるので、1~2日経てば、95%以上は代謝されていることが想定される。

安全マージンを考え、1週間程度の期間が開いていれば、おおむね問題ないとは思われるが、「スポーツファーマシスト」に相談して欲しいです。

薬物動態のパラメーターで、体から排泄されるまでの時間を想定できるのは、薬剤師の強みの1つと言えますね!


成分が禁止物質である場合

検索をしていて、成分が引っかかってしまった場合は、まずは2つの方法が考えられます。

  • 禁止物質を含まない適切な代替治療があるかどうか
  • 代替治療がない場合、治療使用特例(TUE)を申請する

薬を内服することによって、本人の競技生活にどのような影響があるかどうか、内服しないことによって、本人の疾患にどのような影響があるがどうかを、患者、主治医、薬剤師でよく話合う必要があります。

適切な代替治療を行うこともありますが、代替できる治療方法がないケースがあります。

その場合は、治療使用特例[TUE]を申請していく必要があります。

https://www.realchampion.jp/process/tue

禁止物質や禁止方法であっても、事前に所定の手続きによってTUEが認められれば、例外的に使用することができます。

原則として、TUEは大会の30日前までに申請が必要です。

また、救急治療や急性病状の治療で禁止物質をやむを得ず使用した場合は、事後であっても速やかにTUEを申請することで、遡及的TUE申請を受けられる可能性があります。その時には、[緊急性を証明する医療記録]なため、医療機関にご相談ください。

以下が、TUEの承認されるための条件です。

  • 治療上、使用をしないと[健康に重大な影響を及ぼすこと]が予想される
  • 他に代えられる合理的な治療方法がない
  • 使用しても、健康を取り戻す以上に競技力を向上させる効果を生まない
  • ドーピングの副作用に対する治療ではない

検索詳細情報

検索日と時間が出ます。

大会の規定等で禁止物質が変わる可能性もありますので、[いつ]の情報かを確認しましょう。

注意点

Global PROは、とても便利なサイトではありますが、すべての商品、成分が掲載されているわけではないです。

また、どのくらいで代謝・排泄されるかどうかの情報もありません。

患者、ひとりひとりの状態によって、代謝・排泄能力も変わってきます。今は飲んでいないけど、検出に引っかかってしまう可能性があります。

認定の薬剤師は、Global PROのサイトに掲載されていない商品や成分についても検討することができますし、

薬の吸収・分布・代謝・排泄といった、薬物動態について学んできているので、ある程度、薬がどのくらい蓄積しているかどうかを判断することができます。

自己判断での利用だけではなく、薬剤師を活用してみてください!

 
くろ
「スポーツファーマシスト」に相談してみよう!
 
はく
相談はマストですね!
 

資格の取得まで必要な期間と経費

1年に1回、4月の下旬頃に、公式ホームページにて募集が始まります。

それ以外の時期での募集はしてないので、資格取得を目指す方は、4月中旬あたりから公式ホームページをチェックし、申込み忘れが無いようにしましょう!

申込みの際にはメールアドレスが必要なため、あらかじめ、準備してくとスムーズに進めると思います!。

受講には定員が定められています。定員に達した場合は、先着順ではなく、抽選によって、受講できるかどうかが決定します。

4月末には登録したメールアドレスに結果が届くと思います。

資格の取得までは1年かかります。おおまかなスケジュールは、以下に示しています。

3月上旬募集についての告知
4月下旬募集開始、抽選結果確認
6~7月基礎講習会の受講
11~12月頃実務講習の申し込み受け付け
12~1月頃e-learning、知識到達試験
4月結果発表、更新

また、基礎講習会の受講料と認定料が別途必要となります。

  • 4年ごとの更新
  • 基礎講習会の受講料:約7600円
  • 認定料:約21000円

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